キーワード:ネットワーク,階層,DAG (directed acyclic graph), 社会性昆虫
[Shimoji, Abe, Tsuji, Masuda. J R Soc Interface (2014)]
上位の鶏が下位の鶏をつつく例が比較的有名であるように,順位制は多くの動物で見られる.順位制には,群れやコロニー内でどの動物個体が優先的に食物や異性などの資源を得ることができるか,を調整する役割があると考えられている.本研究では,働きアリの間の順位制を、枝に向き(攻撃するアリから攻撃されるアリへの向き)がついたネットワークと見なして解析した.観測した6個のコロニーは,ほぼ完璧な階層(DAG と呼ばれるネットワーク)を成していて,枝は多くなく(= 攻撃はそれほど頻繁ではなく),ランダムなネットワークであった(下図).各アリが何匹のアリに攻撃されるかを数えると、1匹や2匹程度というようにあまりばらつきがなかった.一方、各アリが攻撃する相手の数には、アリによって大きなばらつきがあった.意外なことに,一番多くのアリを攻撃するようなアリは、どのコロニーにおいても,階層の上の方だが一番上ではない位置にいることが分かった.
図:アリの順位ネットワーク.丸はアリを表す.ひとつひとつの線は実際には矢印になっていて、上のアリ個体から下の個体へと矢印が向かっている. |